最後の被害者
ある日、竜とパンダが会話をしていました。
竜 「中国で発売が停止されていた化粧品『SK-Ⅱ』が12月から販売を再開するよ」
パンダ「ふーん」
竜 「もともと、中国衛生省が9月に『化粧品の成分に有害物質が入っている危険性がある』と指摘したのが始まりだったんだ」
パンダ「それがどうしたの。興味ないけど」
竜 「実は、SK-Ⅱは『日中紛争の被害者』と言われていたんだ」
パンダ「SK-ⅡってアメリカのP&Gがつくってんでしょ。日本は関係ないじゃん」
竜 「おっと、興味ないと言いながら、知ってんじゃん。P&Gは米国だけど、SK-ⅡはP&Gジャパンが作っているから、メード・イン・ジャパンなんだよ」
パンダ「なんにせよ、有害物質が入ってたなら、仕方ないでしょ」
竜 「有害といっても、クロム、ネオジムという自然界に存在する物質なんだ。化粧品の原料に微量に入っていてもおかしくないとP&Gジャパンは正面から反論していた」
パンダ「じゃ、なんで中国は突然、そんなこと言い出したの」
竜 「当時は小泉政権で、日中関係は悪化していたからさ」
パンダ「小泉政権は5年前から続いていたじゃん」
竜 「日本側が今年の春、輸入農産物の農薬検査基準を高目に変更して、中国の野菜がことごとく輸入禁止になった。直接にはそれの腹いせ、と言われている」
パンダ「何だそりゃ。それで、中国衛生省はSK-Ⅱを『売るな』と言ったの?」
竜 「いや、微妙なとこで『危険性がある』と公表しただけ」
パンダ「でも、国がそういえば消費者はパニックになるわな」
竜 「そう。化粧品店に返品や抗議が続出して結局、P&G側が販売を自粛したり、デパートが店の撤退を求めたりして、SK-Ⅱは姿を消したわけ」
パンダ「じゃ、SK-Ⅱが発売再開されるのはなんで?」
竜 「中国衛生省が今月に入り、『化粧品には微量のクロム、ネオジムが含まれているが、正常に使用すれば危険性は低い』という見解を発表したからだよ」
パンダ 「は? それってP&G側がずっと言ってたことじゃない」
竜 「安倍政権が誕生して、一気に日中和解路線に振り子が動いたから、軌道修正を図ったようだ」
パンダ「ようだ、って。これ、日本なら大変じゃない? 厚生労働省が『この化粧品は危険だ』と言って販売停止に追い込み、あとで『やっぱ、そうでもなかった』って言ったら、何十億円の損害賠償請求が起きるんじゃないの?」
竜 「起きるだろうし、厚生労働次官や大臣の首に発展するだろうねえ」
パンダ「中国はおとがめなし?」
竜 「なし」
パンダ「何ということだ」
竜 「他にも9月頃は、日本の魚から基準値の数百倍の有害物質が出たとか、日本のお菓子にも危険な成分が発見されたとか、次々出始めていた。安倍首相が訪中して動きが止まったけど、そうでなければもっと大問題になってだろうね。だからSK-Ⅱは『日中紛争最後の被害者』と言われている」
パンダ「最後であってほしいね。しかし、時の政策で、データが変わるなんて、あったらおかしいよ」
竜 「データとか、特定の意図があればいくらでも客観性を装って作り上げられるってことなんだね」
パンダ「まあ日本だって今、内閣府が分析するデータがもとで『景気拡大期間が戦後最高になった』って言ってるもんな。政府としては改革の成果と強調したいんだろうけど、失業率とか収入格差のデータは無視してるし」
竜 「世論だって操作されやすいよ」
パンダ「世論?」
竜 「例えば東シナ海で中国が国境線沿いにガス田を勝手に開発してる、って問題になってるでしょ? あれだって中国が昔、日本側に『共同開発しよう』と提案したのを、日本が『たいしてガス無さそうだからいいや』って断ってる話なんだよね。そこらへんの話が意図的に隠されている」
パンダ「そういう日中両方の政府の意図にいちいち乗せられて、日本製に問題があると中国人がパニックになったり、中国は勝手な国だと日本人が怒ったり、煽られる国民はたまったもんじゃない」
竜 「そういうこと。国のやること言うことは冷静に見ないとね」
パンダ「ところで下の写真は何? SK-Ⅱとは違うけど」
竜 「まだ再開してないから、北京のデパートで取りあえず資生堂を撮ってみた」
パンダ「何でも載せりゃ、いいってものじゃないけどなあ」
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